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《フィクションを食べよう》(1)レーズンマフィン

……私はするりとぬけ、
「あ、志門、マフィン食べない?」
籠に山盛りにしたレーズンマフィンを私は持って来た。小麦粉とベーキングパウダーと卵と牛乳、サラダ油でこねてオーブンで焼くという、このお菓子、簡単なわりには見ばよく、おいしそうなんだけど。志門は、
「いや。そういうの、きらいやねン」
――連もそういえば私が作ったお料理は喜んで食べるくせに、お菓子はきらいみたい。

(田辺聖子 「男たちはマフィンが嫌い」より)

タイトルそのままのシーンだ。
この作品中のマフィンは、登場人物たちには好まれていない。挙句の果てに作品の最後には、マフィンを焼いた当の本人であるヒロインの「私」までが「あまり好かないことに気づいた」なんて言いだす。そんなアイテムであるにもかかわらず、この原材料の羅列を見てたらやっぱり食べたくなってしまう。

手近な材料のみで作れるということで、思い立ったが吉日!とCookPadでよく似たレシピを探したら、あらまあ、先日の(「フィクションを食べよう」ではない)ヨーグルトクッキーの作者でもあるnathuさんのレシピが!

ノンバター・サラダ油で簡単*マフィン*

CookPadのアカウントはまだ取ってないんだけど、もし取ったらnathuさんはお気に入りに決定だ。うん。

正直、お菓子作りをひと月少々続けて、日常的にお金がかかるのが「油脂関係」だとわかったので、こういう油がサラダ油ちょっとだけでOK、なんていうお菓子は、家計のためにもめちゃめちゃ助かるのだ。
nathuさんは標準的なマフィンのケースを使って5個焼いているようだ。うちにはかなり小さなシリコン樹脂製のケースがあるので、レシピどおりの生地の量だと、プチマフィンが12個焼ける。レーズンが苦手な長女の分はプレーンマフィン、ほかの3人の家族の分はレーズンマフィン(生地にサルタナレーズンを適宜混ぜるだけ)にして、180度のオーブンで待つこと25分。
てっぺんのおいしそうなひび割れは少ないものの、ドーム状にふくらんだ姿はそれはそれでおいしそう。

肝心のお味は… 外は若干かりっと焼けて、中はしっとりでふかふか。おいしいじゃないの!
これは正直、おせいさんの小説の登場人物たちに抗議したい気がしないでもない(笑)
もっとも、nathuさんのレシピどおりに作ると確かにおいしいが、ヒロインの「私」の作り方が悪かった可能性もないことはない。
それにあの小説の言わんとしているところは「もともと好きじゃなかったものを見栄で焼くからいけなかった」という視点にあるので、食べたくて自発的に作る分には、同じものでも充分おいしい、のかもしれない。
実際、うちの娘達の評価(特に長女はシビアなときはシビアなんだが)も、このnathuさんレシピのマフィンに関しては決して悪くはなかった。

この作品の別の部分にも、そしてこの作品が収録された短編集「ジョゼと虎と魚たち」(表題作は映画化されてさらに有名になった)のほかの作品にも、なにやら読んでいておいしそうなものがまだまだ出てくるので、可能なものは今後また作ってみたい。

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